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神奈川県の「県の石」

先頃5月10日に、日本地質学会(以下「学会」)が全47都道府県の「県の石」を公表しました。


確かにこれまで都道府県のシンボルとしては花・木・鳥が中心で、他にシンボルカラーなどを制定している所もありますが、石をシンボルとして制定している都道府県はこれまでありませんでした。同学会の創立125周年に向けての記念事業の一環で、2014年から公募した候補から学会で組織した選定委員会が検討して選定したものとのことです。

全47都道府県それぞれに石・鉱物・化石の3部門で、その県に特徴的に産出する、あるいは発見されたものを選出しているため、全部で141種に増えています。敢えて3部門に分けている辺りに、学会としての拘りを感じます。神奈川県では
  • 県の石:トーナル岩
  • 県の鉱物:湯河原沸石
  • 県の化石:丹沢層群のサンゴ化石群
選定されました。


「トーナル岩」については以下の2つの博物館のサイトの説明がわかりやすいかと思います。

うち、「神奈川県立生命の星・地球博物館」のサイトで読めるものは「かながわの自然図鑑① 岩石・鉱物・地層」(神奈川県立生命の星・地球博物館編 2000年 有隣堂)の内容と同一です(15ページ)。なお、同書は今年2016年に改訂を施した新版が出版されていますが、今のところ私は未見です。旧版や上記サイトでは丹沢のトーナル岩の年代を「700万年前」としていますが、日本地質学会のサイトでは最近の測定結果に基づいて「500~400万年前」としており、この石が形成された過程も「丹沢が本州に衝突してからできた岩体と解釈されている」と解説していますので、新版ではこの点が書き替えられているかも知れません。ただ、丹沢山地が当初は島であったものが後に本州に衝突する過程を示す石であるという点には変わりはありません。


「湯河原沸石」が産出する「不動滝」の位置
(「地理院地図」)
「湯河原沸石」は地質学会によれば神奈川県内の地名を付された唯一の鉱物ということで、鉱物と産地が湯河原町の天然記念物に指定されています。湯河原の不動滝は温泉街に近い観光スポットの1つで、人が容易に入っていける場所に産地があるのも特徴と言えるかも知れません。


丹沢山地で見られるサンゴ礁の化石も、トーナル岩と同様に丹沢山地がかつては南の海にあったことを示すものであると言えます。


選定されたこれらの「県の石」を見ていると、少なくとも神奈川県の場合は地形の成り立ちを説明する上で鍵となるものが優先的に選ばれた印象があります。他の都道府県についても同じことが言えるかどうかは一概には言えませんが、少なくとも神奈川県の「県の石」は地質や地学の専門家としての見識が示された選定であるように思えます。

その分、根府川石や真鶴石、あるいは南足柄市の天然記念物になっている矢倉沢の蛤石などが選に漏れており、その土地の史料に見える石が入らなかった嫌いはあります。古くから知られていたり利用されていたことが記録に残るものであっても、その土地固有のものであったり地学的に特異なものと言えるかという点で、他に勝る石があったということになるのかも知れません。無論、この点については学会からのコメントにもある様に、シンボルとして選ばれなかったものにもその土地の地質や成り立ちなどを語る上で重要なものもあることは言うまでもないことです。私も今回の選定に異存がある訳ではありません。

ともあれ、今後これらの「県の石」が果たしてどの程度世間に認知されるかが課題でしょう。最近はジオパークなどの形で地学への関心を高めようという動きが大きくなってきていますので、そうした動きの中でこれらが有効に活用されて浸透していくかが鍵かと思います。
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↑ブログの内容を分析してカテゴライズするとの触れ込みでしたが…そちらはあまり期待通りになっていないですねぇ。
でも参照されている方が多い様ですので設置を継続します。

この記事へのコメント

こんにちは。 - きくちゃん - 2016年05月17日 18:08:55

初めまして(だけど)いつもお世話になっています…w
県の石があるとは知りませんでした。
リンク先を見たら宮城県はスレートとなっていたのですが、スレートが石の名前だと言うことも知りませんでした…。(屋根の種類かと…w 粘板岩のことでした。)
いつも丁寧な記事で、資料の引用も丁寧ですごいなあと思っています。
理解できないことも多いのですが、こんな資料があるんだといったことがわかったりして、参考になります。ありがとうございます。
(植物系の内容を特に楽しみにしていたりします…w)

こんばんわ〜(^O^)/ - たびぱぱ - 2016年05月17日 19:36:51

県の石!!
面白いですね〜(^O^)/
面白い記事ありがとうございますm(_ _)m

実は県の鳥とか花とかすら気にしたことがありません。
お恥ずかしい話^_^;

これからは出張先の県の〇〇を調べるのも面白いかなぁ〜と思いました。

Re: きくちゃん さま - kanageohis1964 - 2016年05月17日 21:34:59

こんにちは。コメントありがとうございます。

私も先日twitter上でこのニュースが流れてきて初めて知りました。ちょっと意外なものが都道府県のシンボルとして取り上げられたなぁ、と考えてこちらでも取り上げてみる気になりました。

他の県では栃木県の大谷石など石材が選ばれたところも多い様ですね。身近で活用されている石材の方が一般には馴染みやすいかも知れませんね。

「風土記稿」の植物の話はひとまず一巡してしまったのですが、また他の地誌などから話題を拾って調べてみたいと思っています。

Re: たびぱぱ さま - kanageohis1964 - 2016年05月17日 21:50:07

こんにちは。コメントありがとうございます。

都道府県の鳥や花、木が定められたのは50年くらい前のところが多いですし(その後に変更した所はありますが)、都道府県の組織のシンボルに活用されている程度でそれほど出番が多いとも言えないですからね。まして、石となると普段注目される機会が少ないものですから、これを普及させるのは結構大変かなとも思います。制定したからには上手く活用して欲しいところです。

どの都道府県のシンボルも、制定にあたってその土地の由緒や植生・生態などと結び付けて決められていますから、そういうものに触れる切っ掛けにしやすいですね。そういった切り口から話題を拡げていければ面白いでしょうね。

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