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足柄上郡川西村「男女妙薬 食物くい合いろは歌」をめぐって

今回は、江戸時代の民間療法の一端が窺える史料を1点取り上げます。民俗的な風合いの強い点で少々珍しい史料と言えるでしょう。


山北町川西透間の位置
西側で静岡県に接する地域
「山北町史 史料編 近世」に収録されていた、「男女妙薬 食物くい合いろは歌」と表紙書きされたこの史料は、残念ながら日付の記載がなく、「年未詳」とされています。「山北町史」の解説では、山北町川西(江戸時代当時は足柄上郡川西村)の滝本家に伝わるもので、筆者の「滝本茂右衛門」は寺子屋の師匠であったとのことです。この人の生没年がある程度特定されれば、この史料が書かれた年をもう少し絞り込むことが出来そうですが、「山北町史」ではその点については具体的な解説をしていません。ただ、近世の史料集に採録している点から見て江戸時代中のものと判断されている様です。奥付には「相州足柄上郡大井庄 透間(すきま)」と川西村の小名が記されています。

この文書には、全部で48のいろは歌の形で、当時の養生に関する様々な知恵が歌い込まれています。一部だけ取り上げようかとも思いましたが、折角なのでひと通り載せることにしました。中には「字余り」ならぬ「字足らず」になっている歌もあって、あまり形式に拘らずに書き留めるべきことを収める方を優先した様にも見えます。「山北町史」では、「滝本茂右衛門」が何らかの形で流布していたこの48歌を書き留めたものと見ているものの、茂右衛門自らの創作である可能性もあるとしています。また、寺子屋で子供たちに教えるために書いたものかどうかもわからないとのことです。

まむしの守

きたみの伝右衛門子分

あさひさす ちかやとふげの かげわらび むかし春をわすれたか きたみの伊右衛門子分此山に にしきもど□の虫あらば 山あふひめに 取て喰せる

のんど妙薬

しんしや口中へ吹込べし、妙也

  1. 家々に 法はさまざま おほけれど/わけて。くすりと どくのさし合
  2. ろんじあい 物くうことの かけそくは/身のたいせつを しらぬ人々
  3. はぐ()には しをたでのはを くろやきし/たびだび付て よきとしるべし
  4. にらと。ちやを。 おほくしよくする ことあらば/かならずみヽの とふくなるへし
  5. ほふそうの 目に入ときは とうがらし。/こまかにすりて 足うらにはれ
  6. 蛇くいは はながらの花 すり。ぬる()/さては。こせふを つけて妙なり

    ◯はながらは ちよぐさ ◯まむしは一名ハミ共申也

  7. 鳥。きのこ。うをにゑいたる ことあらば/紺屋のあいを のみて妙薬
  8. 血どめには きりんけつと みいらば/二いろこにし つけてとまるぞ
  9. りんびやうに 大麦をいり もろこしも/(おなじく)いリて せんじ(もちい)
  10. ぬるきもの あつきもあしゝ とりわけて/茶。のぬるきこそ たんをしやうずる
  11. るいおほく はやり病の する時は/そうじゆつのむか 又はたくべし
  12. あふだんや ちゆうまんなどの 病には/しじめの汁を 朝暮(ちょうぼ)もちいよ
  13. わきがこそ いわろくしやうに 二色(ふたいろ)まぜて/       (四句欠か)これをつけべし
  14. かみがさは 松笠(まつかさ)をとり 黒焼し/ごまのあぶらて ときつけるなり
  15. よこねこそ 桐ノ木焼て みやうばんを/やきかへしつゝ 白湯(さゆ)て用よ
  16. たけのこを おほくしよくせば かならずに/(たい)(そんする) ものとしるべし
  17. 蓮根(れんこん)は 気詰人(きづめのひと)に (もちうれ)ば/目もすこやかに せいこんをます
  18. そこひこそ せんれう。 さいこ さんきらい。/とうき。と四色(よいろ) せんじ用る
  19. つねつねに 女中くわいにん してのちに/四足のものを 喰はたいせつ
  20. ねこ。ねずみ。犬。はち(など)の けがしたる/物をしよくして 悪病をやむ
  21. なまねぎと 山もゝおほく しよくするは/せんきすばくの どくとしるべし
  22. らうさいや 気のつきなどの する人は/こうこうの穴 灸をすへべし
  23. むし()には つばくろのふん。のりにまぜ/丸めてうろへ 入れてよきもの
  24. うなぎこそ しやぜんし(いり)て 子こどもには/つねに用ひて かんの妙薬
  25. ゐちごには。こんぶきんもつ すもゝには/すゞめやさうは どくと知るへし
  26. のちざんの くだりかねたる ことあらば/ゆずの実三つぶ 白湯(さゆ)で。のむべし
  27. おなじくは なすびもおほく しよくすれば/かさをばしようじ 目をもそんずる
  28. くじき身や。打身(うちみ)にふくべ うどんの()二色(ふたいろ)あわせ 酒でのむべし
  29. やけどにも 灸のくずれに むらさきの/絹切(きぬぎれ)やきて つけて妙やく
  30. まくわ瓜 なかをしぼりて くわすべし/さなごはかつけ。目にはどくなり
  31. 下根(げこん)にて いねむりおほく する人は。/さんそうにんを 茶にてのむべし
  32. ふけおこり。ごしつ弐匁(にもんめ) せんじつゝ/おこり()のあさ これを(のむ)べし
  33. 子どもには とうもろこし。や こんにやくは/おほくしよくせば むしのだいどく
  34. えたきして はいたるあとで 水のめば/しやうかちおこる ものとしるべし
  35. でぢいぼぢ 脱肛にさる ほういしに。あをのりまぜて 付て妙なり
  36. あかはらや くだるにくわつ せきすいひして/かんざうくわへ 水てのむべし
  37. 酒のみて じゆくしの柿を しよくすれば/むしをいためて しんつうとなる
  38. きじにそば。とうしょくすれば すんばくの/むしをもとめて 筋をいたむる
  39. ゆだんなく 灸をは四季に すへたまへ/やまいをださぬ ものとしるべし
  40. めんるいの まへには酒を のみてよし/くうてののちは のむはあしきぞ
  41. みもちなる 女中に玉子 くわすれば/其子むまれて。たいどくとなる
  42. しらずして すしと小豆(あずき)と しよくすれば/しやうかちおこる ものとしるべし
  43. ゑひに。かに くうはあしきと こころへよ/たにしにごまも これきんもつ
  44. ひやうそには みゝづの土を よくさりて/黒ざとうまぜ ねりて付べし
  45. もゝおほく しよくしてたんも おこるなり/せきをいだして はらもはるなり
  46. せりを。すで。おほくしよくせば はをそんず/あかきせりこそ 人をころすぞ
  47. すじかつけ 又とおこらぬ 妙やくは。/ういきやうの()を 酒でのむべし
  48. (京)今日迄も 病ひなしとて じまんすな/身養生(みのやうじやう)を 大切にせよ

小便つまりには 雪隠のむし黒焼にして足のうらにはるべし。大妙薬也。是はうじなるべし

しらくもは □□この□□あぶら付て妙也

栂ハしらくもには ふじに[ ]であてて妙也

餅ののどにかゝりたるには(にわとり)ののとさかの血ヲトリロ中へ入れ候へば妙也

一難産には雪隠のふみ板の裏のかびを。こそげてのむべし

一きのこにゑたるには 竹がわせんじのむべし 竹がわなくば竹がわのぞうりをせんじて用めべし 妙也

一切傷又はすりむきの血どめには、やまぶきの花をほし置て付けべし ちとまりてきずも治す

(上記書1360〜1364ページより、ルビは一部省略、くの字点はひらがなに展開、歌中の改行は/に置き換え、和歌はリストに収め、一部傍注追記、イロハはスタイルシートにて表示させているため、ブラウザによって若干表示が異なる可能性があり、出典元の表記とは必ずしも一致しない)


どちらかと言うと、食い合せなど食べ物にまつわるものが多数を占めていると言えそうです。無論、近代以降の医療の知識に照らした際には首を傾げる様なものも少なからず混ざっていますが、当時の養生に対する知識がどの様なものであったか、特に山村部ではどうであったかを見る上では、良いヒントになるのではないかと思います。

以前取り上げた一連の産物との兼ね合いでは、冒頭に置かれている「まむしの守/きたみの伝右衛門子分」で始まる一節がまず目を引きます。この部分は48歌に含まれてはおらず、五七調に近い節でもう少し長く展開しています。先日山菜にまつわる民話の1つとして「わらびの恩」の話を取り上げましたが、蛇に咬まれた時に「わらびの恩を忘れたか」と唱えると毒が消えるという、そのまじないの1つの形が冒頭に掲げられている訳ですね。やはりこの伝承も江戸時代に丹沢山中で広く語られていたことを証すものと言えそうです。「きたみの伝(伊)右衛門子分」云々が何を指すかは不明ですが、効き目を増すための「脅し文句」なのでしょうか。それを、48歌を書き出す前に最初に置いたことになります。

また、蛇に咬まれた時の対処については、他に「ヘ」の項でも対処法が歌われており、この歌だけ傍記でまむしの別名が記されるなど、扱いが幾らか重くなっています。これらの扱い振りを見ると、やはり山中では蛇毒への懸念が特に強かったことが窺えます。

「ソ」の歌に出て来る「さいこ」は「柴胡」のことでしょう。基本的には漢方の処方に則って使われていたと思われる薬草ですが、この歌の中では他に「さんきらい(山帰来)」「とうき(当帰)」の名が見られますし(「せんれう」が何を指すかは今のところわかっていません)、「ケ」の歌には「さんそうにん(酸棗仁)」、「ス」の歌には「ういきやう(茴香)」の名前が見えます。こうした民間療法にあっても漢方の処方についての知識が断片的に(恐らくはかなり不完全な形で)伝わり、実際に用いられていたのでしょう。

もっとも、ミシマサイコについては環境が整えば日本でも自生しているのを(少なくとも当時は)見出すことが出来たとは言え、いざという時に何処でもすぐに入手可能であったかというと多少疑問もあります。「山帰来」に至っては基本的に日本では自生種がないとされていますから、正しいものを手に入れようとすれば江戸経由で購入するしかなかったでしょう。「そこひ」とは眼病のことですから、それほど頻々と罹る日常の病ではなかったでしょうが、とは言え、いざ必要となった時にこれらの薬草が入手困難ということでは、なかなか実際に処方するのは難しいということになってしまいます。但し、「山帰来」の場合はサルトリイバラが代用品として用いられることもあったので、あるいはこうした民間療法では代用品で間に合わされていたのかも知れません。因みに「茴香」は「農業全書」でも栽培法が記されるなど、江戸時代から生産が行われていたことがわかりますが、こうした民間療法に際して国内栽培された茴香がどれ程購入されていたものかはわかりません。

勿論、「ヨ」の歌に見える「みやうばん(明礬)」の場合は、他に代用品もないと思いますので、何らかのルートを経由して購入していたのでしょう。もっとも、この場合も信濃の「土どうす」の様な、純度の若干落ちる品で間に合わせていた可能性もありそうです。

この「男女妙薬 食物くい合いろは歌」については、後日もう1回取り上げる機会があるかと思います。



PS. MacOSXのFirefox環境では、上のいろは48歌の「ン」と出るべき所に「イイ」と表示されます。GoogleChromeでも同じ表示になる様です。他のブラウザ環境ではどう見えているか、コメントを戴ければ参考になります。それにしても、やはり「ン」は表示されるべきだと思うのですが、CSSの仕様がどの様に議論されて来たのかが気掛かりです。
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この記事へのコメント

- えんじぇるはーと - 2015年09月02日 21:49:26

こんにちは♪

>難産には雪隠のふみ板の裏のかびを。こそげてのむべし

これはちょっと・・・いやですねぇ・・・(笑)

Re: えんじぇるはーと さま - kanageohis1964 - 2015年09月02日 21:59:29

こんにちは。コメントありがとうございます。

確かに1つ1つ項目を追うと、今となってはおいおいと思う様な項目も結構ありますよね。他にも虫歯にツバメの糞を糊に混ぜて詰めろとか、雪隠の虫を黒焼きにして足の裏に貼れとか、…まぁ、限りなくおまじないに近いものも含まれていそうですね。

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