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「箱根湯治場道見取絵図」について

以前、江島道についてまとめた際に、余談として「海道其外分間見取延絵図」のうち東京美術から出版されたものを一覧として掲げました。また、その際に「根府川通見取絵図」の解説に、渡辺和敏氏が

『東海道分間延絵図』をはじめとするこの絵図は、幕府が三部を作成し、そのうちの二部については所蔵施設が分かっているのであるが、その所蔵施設にない新しい絵図が、近年別の所から発見されはじめている

(「根府川通見取絵図」第2巻解説より)

と記されていることを紹介しました。

最近になって、「埼玉県立歴史と民俗の博物館」の今年の特別展「江戸の街道(みち)・絵図でたどる宿場と関所」の展示資料の一覧の中に、
  • 日光御山内見取絵図(郵政博物館蔵) 今回初公開
  • 箱根湯治場道見取絵図(郵政博物館蔵) 今回初公開
と、初公開とされている絵図が挙げられているのに気づきました。もしやこれが渡辺氏の指摘する別の所の絵図か?と思ったものの、残念ながら大宮まで出掛ける都合が付きそうにないので、この絵図について他に拠り所となる文献がないか探してみることにしました。絵図の名前がわかってしまえば、その名称でネット上を検索するくらい、今はその場で出来てしまいます。

果たして、「箱根湯治場道見取絵図」の方は以下の本で紹介されていることがわかりました。

温泉の原風景:論集【温泉学Ⅲ】」日本温泉文化研究会編 2013年 岩田書院


こちらの1本めの論文「箱根七湯の道―逓信総合博物館所蔵『箱根湯治場道見取絵図控』を中心に―」(柘植(つげ) 信行)に、この絵図のあらましと全図の縮小版全体が翻刻と共に掲載されています。以下、基本的にこちらの論文を元に紹介を試みたいと思います。因みに、柘植信行氏は品川歴史館の副館長をされている方です。

この絵図は渡辺氏が指摘する別の場所で発見されたものではなく、元より逓信総合博物館(2014年より郵政博物館)が所蔵するもののうちの1本です。「五海道其外分間見取延絵図」を現在所蔵しているのは東京国立博物館と郵政博物館ですが、郵政博物館のみが所蔵する絵図はこの「箱根湯治場道」の他、「本坂通分間延絵図控」「信州松本通見取絵図控」「日光御山内見取絵図控」の合計4点です。この4点は今のところ未出版です。「控」とされていますが、東京国立博物館の方が将軍に献上されたもので、郵政博物館の方は道中奉行の手元に残して実務に使ったことから来るものでしょう。但し、どちらか一方が正本であったのか、それとももう1本正本があったのかはまだわかっていない様です。何れにせよ、「別の場所」で発見された絵図がどの街道を描いているのかは、引き続き情報収集する必要がありそうです。

以前江島道のまとめの際に作成した一覧では、「本坂通」については「宿村大概帳」は存在するが絵図がないと書きましたが、やはり大概帳と絵図はセットで作成されていたことになります。この「本坂通」と「信州松本通」については2012年に逓信総合博物館の特別展で公開されたことがありますが、残りの2本は今回埼玉県立歴史と民俗の博物館で初公開、という訳です。また、「本坂通」の方は他に豊橋の二川宿本陣資料館でも2011年の企画展で展示されていたことがある様です。しかし、郵政博物館のみが所蔵する4本の絵図について、その全体を解説した文献は、今のところこの柘植氏の論文のみで、外は本坂通の宿場の景観の検討に際して引用されているものがあるだけの樣です。

さて、この「箱根湯治場道見取絵図」は全部で2巻から成っているのですが、「五海道其外分間見取延絵図」の複数巻にまたがっている絵図では、1本の街道を1巻に収録し切れないために適宜分割して収めているのが基本です。しかし、この「箱根湯治場道見取絵図」の場合はそうではなく、別方向に向かう2本の道が各巻に収められています。


「箱根湯治場道見取絵図」第一巻の道筋(概略)



「箱根湯治場道見取絵図」第二巻の道筋(概略)


まだきちんと委細を確認した訳ではないので、上の地図は基本的に今の国道や県道に沿って仮に線を引いただけであり、飽くまでも起点と終点を確認するための目安として見て下さい。第1巻は三枚橋付近で旧東海道から分岐する辺りから描き始められ、湯本・塔ノ沢・大平台・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯を経て、元箱根の興福寺手前で再び旧東海道と合流するまでの様子が描かれています。終端部では芦ノ湖を右手に見て箱根関所から箱根宿にかけて遠景の様に見渡す構図になっています。大筋では現在の国道1号線に沿った道筋ということになります。

これに対して第2巻は、第1巻の途中の宮ノ下で分岐し、宮城野・仙石原を経て乙女峠を越え、駿河国に入って深沢・東田中・御殿場へ向かい、御殿場の真教寺(明治時代以降に廃寺となったため現存せず)の先で矢倉沢通に合流するまでの様子が描かれています。この道筋は現在も「箱根裏街道」と呼ばれている道筋であり、大筋では現在の国道139号線や静岡県道401号線に沿っているものと考えられます。

この論文では絵図の精度については未検証ということの様ですが、翻刻が付されているのでどの様な拠点が記されているかを知る手掛かりになります。ただ、絵図全体が収められているとは言え、グレースケールで縮小印刷されているため細部の検証を行うには不足で、並行する早川と温泉道の位置関係を大まかに見ることが出来る程度です。この道筋は明治時代に入ると早い時期から馬車などの車両通行を考慮して大規模な改修が行われ、傾斜を緩めるために多数のヘアピンカーブを備えた道筋に変えられています。明治時代に作成された地形図には既にそうした改修が行われた後の道筋が描かれているため、「箱根湯治場道見取絵図」は改修前の道筋が測量されて描かれた唯一の絵図ということになります。また、各温泉宿以外では精進池付近の石塔・石仏群についても概略が記されているのが目を引きますが、以前の浦賀道・江島道の検証の際に散見された寺社の記述の精度上の課題が、この「箱根湯治場道見取絵図」では見られるのか否かが気になります。


仙石原関所跡碑付近(ストリートビュー
「見取絵図」ではこの関所の手前に
石橋があったことが描かれており、
現在も小さな橋が郵便局の脇にあるのが確認できる
箱根湯治場道が見取絵図作成の対象となった理由については特に考察されていません。元より箱根の温泉には大名やその奥方も湯治に訪れたことが記録されており、大名が温泉道を通行することがあったことが理由の1つに挙げられるでしょうが、仙石原の関所が描かれている点についても考える必要があるでしょう。「新編相模国風土記稿」には仙石原の関所について

◯御關所 東方にあり、濶一段一畝二十九歩、小田原領主より番士を置き、非常を警しむ、起立の年代詳ならざれど、元和年中と傳ふ、始は御番所と唱へしが、寛永三年御上洛の時此所駿・甲二州に通ずる間道たる由、縣令八木次郎右衛門重明言上に及びしかば、卽台命ありて、更に嚴を加へ、御關所と定められしと云、

(卷之二十一 足柄上郡卷之十、雄山閣版より)

と記していますが、この関所は箱根周辺にあった6つの関所のうち河村・谷ヶの関所同様、基本的に旅人の通行は認めない運用をしていました。仙石原の関所が比較的小規模で制限的な運用がなされていたにも拘らず、同地を通過する街道の見取絵図が作成されていたということであれば、同様に小規模な関所であった河村や谷ヶの関所を経由する街道についても絵図が作成されていても良さそうですが、今のところその様な絵図の所在は確認されていない様です。「箱根湯治場道見取絵図」の存在は、こうした絵図作成の目的という課題を改めて考える切っ掛けになると言えるかも知れません。

何れはこれらの絵図4本も東京美術から出版されるのでしょうか。それとも、現在の出版業界の景況を考えると、今後は国立国会図書館のデジタルコレクションの様な形で公開されることになるのでしょうか。やはり現地での照合作業を一度行ってみたいところであり、何らかの形で一般向けに公開される日が待ち望まれるところです。




追記(2015/07/26):ストリートビューを2009年時点のもので固定しました。
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