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「七湯の枝折」と「新編相模国風土記稿」

以前「ハコネサンショウウオ」についてまとめた際に、「七湯(ななゆ)枝折(しおり)」という文献から一部引用しました。今回箱根の他の産物について改めて調べるに際して再びこの資料を手に取りました。

Sokokura by Hiroshige1.jpg

歌川広重「箱根七湯図絵」より「底倉
Museum of Fine Arts Boston.
Licensed under Public domain
via ウィキメディア・コモンズ.
「七湯の枝折」は文化8年(1811年)に江戸の「文窓」および「弄花」なる人物が著したもので、彩色を施された多数の図(恐らくは弄花の画)を含んだ全10巻から成る、箱根七湯を紹介する案内書です。現在までに約30の写本が伝えられていますが、底倉の温泉宿「つたや」に家宝として伝えられてきたものが、著者自ら同地で浄書したものと考えられている様です。ただ、この2人の著者の経歴や「七湯の枝折」が編まれた経緯などは伝えられていないとのことです。

基本的には絵巻物風の体裁を取っていますが、文章量も多く、のちの写本には折本などの体裁に改められているものも含まれています。なお、今回はこの「つたや」本を翻刻した沢田秀三郎釈註「七湯の枝折」(1975年 箱根町教育委員会)を参照していますが、以前引用した「『七湯の枝折』企画展図録」(2004年 箱根町郷土資料館)では別の底本を翻刻しており、文言に多少の違いが見られます。この沢田秀三郎氏はこの底倉「つたや」の大正期の主人で植物学者でもあった沢田武太郎氏の弟に当たる人です。


全10巻中第2巻から第8巻までの7巻が、それぞれ「湯本」「塔ノ沢」「堂ヶ島」「宮下」「底倉」「木賀」「葦の湯」に充てられており、それぞれの冒頭で各温泉の宿と効能の一覧が掲げられ、特記すべき由緒や景観を歌った詩歌などが続きます。残りの巻で周辺の名勝や名産品を紹介する攻勢になっていますが、基本的には温泉の紹介が主であるため、特に寺社などの紹介はごく簡潔なものに留められています。

この一連の記述を読み進めていて、ふとその内容に「新編相模国風土記稿」で見られるものと共通するものがちらほらとあるのが気に掛かりました。「風土記稿」の足柄下郡の項は天保7年(1836年、首巻凡例による)と「七湯の枝折」より25年ほど後に書かれていますから、参照関係があるとすれば「風土記稿」の方が「七湯の枝折」を引いていることになります。そこで、どの程度影響が見られるかを軽く調べてみることにしました。

最初に気に掛かったのは双方の絵の構図が良く似ていることです。例を挙げれば以下の通りです(「風土記稿」の引用は例によって何れも雄山閣版からです。また、沢田秀三郎釈註「七湯の枝折」はモノクロ印刷のため、彩色が抜けている点は御了承下さい)。


「新編相模国風土記稿」より三枚橋図
「新編相模国風土記稿」より三枚橋図
「七湯の枝折」三枚橋図(部分)
「七湯の枝折」より三枚橋図(部分)

「新編相模国風土記稿」より北條氏墳
「新編相模国風土記稿」より北條氏墳
「七湯の枝折」北条五代の墳の図
「七湯の枝折」より北条五代の墳の図

「新編相模国風土記稿」定右衛門古瓶図
「新編相模国風土記稿」より
定右衛門古瓶図
「七湯の枝折」伊豆屋古器の図
「七湯の枝折」より
伊豆屋古器の図

双方に共通しているのは構図の取り方です。三枚橋はどちらも早川下流左岸側からの俯瞰的視点で描かれており、北条氏の墓はどちらも向かって右斜めからの視点になっています。そして古瓶の図の口の欠けた位置の描き方も共通しています。「七湯の枝折」も「風土記稿」も写本の形で後世に伝わっており、それぞれ複数の絵師が手で絵図を描き写している訳ですから、その過程で画風などが変化している可能性を考える必要はあります。しかし、筆写する過程で構図を大きく変化させることはまず考えられないので、その特徴は双方の原本にあったと考えて良いでしょう。その構図が共通しているということは、あるいは「風土記稿」の絵師が「七湯の枝折」の絵図を参照し、参考にしている可能性も考えられます。

もっとも、墓に刻まれた碑銘や古瓶の寸法など、細部の記述は異なっており、少なくとも「風土記稿」の絵師が「七湯の枝折」の記述に無批判に従っている訳でもないこともわかります。勿論、「風土記稿」の絵師が「七湯の枝折」を参照せずにこれらの絵図を描いた可能性もあり、その場合は構図の類似は偶然の一致ということになります。

他方、記述の方はどうでしょうか。例えば「風土記稿」の元箱根の項(卷之二十九 足柄下郡卷之八)には

◯土產 △明礬明礬山に生ず、山下に製店あり、 △硫黄本宮山温泉の邊多く生ず、

と産物の生産される場所が記されています。ところが、元箱根の山々として記されているのは

  • 駒ヶ嶽
  • 死出山
  • 挑灯山
  • 本宮山
  • 小地獄山
  • 大地獄山
  • 冠ヶ嶽
  • 神宮山
  • 諸佛山
  • 神山
  • 山伏峠
  • 三國山
  • 駿河津峠
  • 飯塚

と、「明礬山」が含まれていません。つまり、「風土記稿」の記述中でこの部分は整合性が確保出来ていないことになります。なお、硫黄の「本宮山温泉」の方は上記の「本宮山」の項に

此山上に溫泉あり、本宮の湯と唱ふ、其効驗姥子の溫湯に異ならず、近き頃出湯の乏きをもて、姑く廢せり、

と、その所在が記されているので、こちらは整合性が取れていることになります。

この明礬山については、「七湯の枝折」には「明礬山ヨリ相模灘眺望ノ図」と共に記述があり、

○右に図する所ハ芦の湯より東北に当りて明はん山と云山より望み見し図なり明凡山ハ東光庵の下をめくり孫兵へ沢といふ所を過て次第に登る事凡十丁ばかり樹木なく兀山にて所々に雑草茨の類蔓延す山の八分目ほとに大石いくつともなく競ひそりて其下より明はん流れ出る此湯味ふるに酸くしぶく明凡の気至てつよし傍らの白石に花のことく明はん凝り付て一めんに自く黄なり又峯ひとつ隔たてゝ向ひに明はん小屋あり此所ハ筥根権現領にて彼の方より掛し小屋也とも其販やうハ湯の流るゝ下へ竹賓をかき上へ筵やうのものを敷て明凡をこしてとる事也…

(「七湯の枝折」59ページより)

と、具体的な明礬の採集方法が記されています。このことから、「風土記稿」はこの記述を参照して転記している可能性が高いのではないかと思われます。勿論、「七湯の枝折」を編纂するに当って参照された別の書物があった可能性も考えられ、「風土記稿」もそちらを見ているのかも知れないのですが、現状ではその様な書物の所在は知られていないので、現状では「風土記稿」編纂時に「七湯の枝折」も参考にされている可能性が強い、ということになりそうです。


そうであれば、先ほどの絵図に関しても、「七湯の枝折」を直接引き写したのではないにしても、その描写に当たっては「七湯の枝折」の構図が参考にされている可能性はやはりあるのではないか、と言えそうです。

「新編相模国風土記稿」の編纂に当たっては、村々から明細書上を提出させた上で、昌平坂学問所から直接現地に訪れて測量を行ったりしています。箱根の各温泉村がこうした明細を作成するに当って「七湯の枝折」を参照していた可能性も勿論ありますし、昌平坂学問所の役人が現地に訪れた際にこうした巻物が存在していることを見せられている可能性も大いにあるでしょう。残念ながら「風土記稿」では「吾妻鑑」の様な古文書については出典を明記していたものの、「七湯の枝折」の様な文献については必ずしも参照したことを明示していないので、その影響の度合いについては推定するしかないのが実情ではあります。しかし、相模国内の全ての村に取材して地誌をまとめ上げる多大な労力を考えた時、こうした既存の地誌的な資料にも寧ろ積極的にあたっていたと考える方が自然ではあります。その上で、その記述に依存し過ぎることなく自前の調査も踏まえてまとめ上げられていた側面が、こうした比較から見えてくる気もするのです。



※追記(2014/07/28):上掲の北条五代の墓ですが、現在の写真と見比べると「七湯の枝折」「風土記稿」何れも墓石同士の間隔がかなり詰まっていることに気付きます。勿論これが後世の修築による相違である可能性もあるので、江戸時代後期の配置はもっと狭かったと考えることも出来るのですが、当時から配置が変わっていないのだとすると、「七湯の枝折」の配置は紙面スペースを考慮して現実よりも意図的に間隔を詰めて描写したとも考えられます。とすると、「風土記稿」の構図は「七湯の枝折」の図をそのまま描き写した可能性も出て来ます。今のところこの墓所が近代以降に改修されたかどうかについて確認は取れていないのでどちらとも言い難いのですが、備忘のためにここに記しておきます。
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